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「真の意味での顧客志向」

「POPを書く上で大切にしてきた3つのこと」と称して前回、前々回、どのようなことを一緒に働くスタッフたちと共有し行動してきのかを書かせていただきました。

 

① モノを売るな、想いを売れ

② お客様とのフラットな関係性

③ 真の意味での顧客志向

 

今回はその第三弾。「真の意味での顧客志向」について書かせていただければと思います。

 

今から数えること約20年、数えきれないほどの仕入れ商談をしてきました。その際、営業の方に「〇〇店でも売れていますよぉ」と言われることが多々ありましたが、いつも「ああ、そうなんですか」くらいで半分聞いて半分聞き流していました。もしかしたら「この人、リアクションうすいなあ」と思われていたかもしれません。

 

これは巧みな営業トークで自分の判断基準がぶれないようにするために意識的に行ってきたことで、この商品を仕入れることで売場にどんな変化を起こし、どんなPOPを書き、お客様にどう喜んでもらえるかばかりを考えていました。

 

業績が悪くなるとどうしても目先の売上が欲しくなります。他のお店で売れていると言われると飛びつきたくなるのも非常によく解ります。自分たちのマーケットを広げていけば売上が取れるからです。ただこれを続けると最終的に立地、規模、価格の競争に終始していくはずです。なので、この消耗戦になるべく近づかないようにすることが我々の生き残る道だと考えていました。

 

ではどのように売上拡大を図るのか。それは「不特定多数」を狙わず、すでにいらっしゃる「特定」のお客様との共感を積み重ねていくことで売上拡大を図ろうと考えてきました。

「いま目の前にいるお客様に徹底的にこだわろう。そのためにそれ以外の大多数の方に嫌われてもかまわない。」とスタッフとは繰り返し方向性を共有してきました。

 

ですので、店舗ごとに品揃えの適正化を図ることはもちろんのこと、たとえ同じ商品が展開されたとしても店舗によりお客様の傾向に合わせて、POPに書く言葉にも変化をつけていきました。

 

スタッフには「我々は商品を売っているのではなく、買うという行為を楽しんでいただく、時間、空間を売っている。」「なので、売上データだけではお客様満足度を正確に判断することができない。お客様は、売場でどんなPOPに反応し、何を手に取り、どんな会話をしていたのかを観察することが大切だ」と話し、自分たちの仕事へのお客様の反応を随一チェックすることをスタッフ全員に求め、そんな彼らにPOPライティングを進めてもらっていました。それを繰り返すことで店舗スタッフたちは数字だけでは見えないお客様の深層心理を学び、POPに何を書くべきかを一番理解できるようになっていきました。

 

それではひとつ事例を見てみます。

 

こどもビールという見た目はビールだけどノンアルコールといった商品のPOPを見てみましょう。某大手ECサイトでは以下のような商品紹介が載っていました。顧客の設定がないので、無理のあるシチュエーション提案とありきたりな商品紹介に終始しています。


以下、私が店長経験をした2店舗です。ひとつが「下北沢店」もう一方が「イオン浦和美園店」。同じ屋号の店舗ではありましたが来てくれるお客様は全く違っていました。前者は、20代前半の大学生くらいの方が非常に多かった店舗です。一方、後者は、30代前後の小さいお子様を連れた30代の主婦の方が非常に多かった店舗でした。

スタッフは店内のメンテナンスなどしつつ該当の商品に対してお客様がどんなリアクションを取っているのかを確認します。そこで行われている会話などからヒントを得てスタッフはPOPを書いていきます。出来上がったPOPは以下の通りです。

決して表現として高度なものではありませんが、そこに来ているお客様にそのPOPをきっかけとして会話を生まれることもよくありました。

 

そんな会話を起こすことで、店舗とお客様の間に疑似的なコミュニケーションが生まれ、共感が蓄積されていきます。この蓄積が積み重なっていけばいくほどそのお客様は店舗のファンになってくれます。ファンになってくれた方は高頻度で来店をしてくださり知人へ紹介してくれたりもします。それが結果的に売上につながるのです。

 

繰り返しになってしまいますが、不特定多数を狙うと消耗戦になるため狙わず、いま目の前に来てくださっているお客様に徹底的にこだわることに重点を置いてきました。

 

そして彼らを徹底的に観察しフックになる言葉を探しそれをPOPにしていく。それは現場の人間が一番知っているため、ボトムアップでアイディアを抽出して「真の意味での顧客志向」を追求していくことが、遠回りに見えて実は売上獲得への近道ではないかと我々全P連は考えているのです。