いままで書いたPOP数知れず、そんな中自分が大切にしてきた3つのポイントについてお話してきました。今回はその2つ目。「お客様とのフラットな関係性」を書いてみたいと思います。
突然ですが、「全米が泣いた!」「全米で大ヒット!」最近、あまり聞かなくなりましたが以前はよく耳にしたこのフレーズ、皆さんもご存じかと思います。この言葉を見たり聞いたりしたときに、皆さんはアメリカ人が号泣している姿が目に浮かんだでしょうか。少なくとも私は想像できず、「またか」という感想しか抱きませんでした。ひねくれものの性分も相まって、「全米が泣いたって言えば注目してもらえるとでも…」とネガティブな印象さえ感じていました。
ではなぜ、このフレーズにピンと来なかったのか?
そして、それを私だったらどう表現するのか?についてあるPOPを題材にして少しお話してみたいと思います。
以前、私が勤務していた店舗では音楽CDを扱っていました。創業当時からBGMはJAZZを中心に流しており、いわゆるJAZZの名盤や普段あまり馴染みのないお客様でも入門になり得るCDを多く扱っていました。そのなかで、有名アーティストの曲がいっぱい入った3枚組セットで2000円という非常にコストパフォーマンスの高いタイトルがありました。
このCDのPOPをいわゆる「全米が泣いた」的な発想で書くと以下のようなものが出来上がります。
なぜこれがピンと来ないのか?その理由は、
① 商品の説明しかしていない
聴いているイメージが湧かない。
② 専門用語が入っている
自分が知らないワードが出てきて自分ゴトにならない。
③ 大多数に向けたメッセージになっている
人と人のコミュニケーション(会話)が成り立っていない。
JAZZに詳しい人であれば、これで十分な内容なのかもしれませんが、3枚組セットが入門編であると考えれば、売りたい相手にうまく伝わらないのかもしれません。
一方、私が書いたPOPは以下のものでした。
結果として、このCDは1店舗で1000セット以上販売しベストセラーになりました。
ポイントとしては、
① シチュエーションを説明している
聴いているイメージをいだかせる
② 専門用語を入れていない
自分と無関係だと思わせない
③ 特定の人に向けたメッセージ(友だちと会話しているような表現)
疑似的に人と人のコミュニケーション(会話)が成り立っている。
特に重要なポイントは、
「人と人のコミュニケーションが成り立っているかどうか」
POPは、紙面を利用したコミュニケーションツール、すなわち接客としてのツールと言えます。実際に対面で接客する際は、お客様にあわせて、話すワードを選んだり、シチュエーションを提案したり、過剰な表現はせずお話しするのではないでしょうか。
マイナスをゼロにするだけでなく、ゼロをプラスにするのが接客であり、あらたな視点を提案し、なめらかにお客様の心の内に届ける。
この考え方を対面接客だけでなく、POPという接客ツールにおいても表現できたとき、店舗とお客様とのコミュニケーションはさらに深まり、それが記憶に残る購買体験につながり価値となっていくでしょう。
モノを手に入れるためのプラットフォームがあふれている今、モノを通した信頼や共感という気持ちが購買のための大きなファクターになっているのです。
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