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POPはお客様感覚が大事

店頭POPというと、「商品がどんなものなのか伝えないと!!」とまず考えてしまいがちですが、あらゆる商品にこの法則が成り立つものでしょうか。「商品が欲しい、探している」という方に対しては非常に有効だと思います。ですが、「なんか、ないかなぁ」くらいの気持ちでいる方に、一気に商品情報を語りまくるのは、なんとなく店舗側とお客様のテンションにずれが起きてしまっているように感じるのです。この件に関して、もうすこしつっこんでお話ししてみたいと思います。

 

店員さんに接客されるのが苦手だ

私ごとで恐縮ですが、私はお店にいって接客されるのがどうも苦手です。電器屋さんとかに行って商品を見ながらワクワクしていると「今日は何をお探しで??」と不意打ちで店員さんに声をかけられ、「いや、あの、大丈夫です…」と言い残し、その場を去っていく、そんなことを繰り返しているのです。服を選んでいる時なんかは特に緊張します。店員さんの動きを見つつ、なるべくこちらに来ないように逃げながら、商品を瞬間的にチェックしたりしています。本当はもうすこしじっくり見たいけど嫌なのです、声をかけられるのが。

 

「なんか、ないかなぁ」と思っているだけなのに

なぜ声をかけられるのが嫌なのかというと、こちらは「なんか、ないかなぁ」としか思っていないのに、「何が欲しいのですか?」と言われても、「いや、特にないし」という受け答えしかできず、このかみ合わないコミュニケーションに負い目を感じて逃げていると言えます。上記の事例は、店頭での接客の話ですが、商品に設置されているPOPがそうなっていることってありませんか??

 

ある音楽CDにつけたPOPの話

私が店頭にいたときの事例です。ある南米音楽のCDにPOPがついていました。音楽に詳しいスタッフがいて、こと細かく小さな字で多くの情報を書き込んでくれました。すごい情報量で流石と言わざるを得ないコメントがそこにはありました。ですが、あまり売れませんでした。

 

そこで入社したてのスタッフにこのCDを聴いてもらい、どんな感じだったのか聞いてみました。「さわやかでスカッとした感じで晴れた日に聞きたいですね」「耳障りにならない感じですね」「リラックスした感じで休みの日って感じですね」。非常に生々しいコメントでした。この入社したてのスタッフは先週までお客様だったわけです。正に、お客様にコメントしてもらったのと同様の価値がありました。

 

そこでPOPを変えてみました。「よく晴れた日曜日の午前中、窓を全開にあけて掃除しながら聴くと気持ちいい」。これだけです。商品情報はまったくなし。このPOPをつけた途端、いままで、売るのに苦戦をしていたこのCDは急に売れるようになりました。

 

なぜ商品説明しないPOPで売れたのか

まず、お客様の「なんか、ないかなぁ」の感覚に合わせるなら、いきなり商品説明をするよりかは、イメージをビジュアル化して右脳に訴えるべきと考えました。「なんか、ないかな」は、非常にあいまいで、論理的に考える左脳モードとは違い、感覚的な右脳モードでの買い物と言えます。お客様感覚にフィットしたコメントを書いたことによる円滑なコミュニケーションがそこに生まれたと言えます。

 

もう一点は、商品情報ではなく、非常に感覚的なコメントを書いたときに、お客様は、商品の奥にそのコメントを書いた店員さんをイメージしたのではないかと思います。お客様は、その音楽CDを前に、商品とお客様の関係ではなく、店員とお客様の関係、すなわち人と人のコミュニケーションを感じ取ってくれたのではないかと思います。

 

繰り返しになりますが、店頭POPというものは「商品説明しなきゃ!!」と考えてしまいがちですが、コミュニケーションは相手があってこそ成り立ちます。お客様がどんな感覚を持って買物に来ているのかを客観的に捉え、どんなコメントを店頭POPに書くべきかを改めて見直してみるのはいかがでしょうか。