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店舗はお祭りのような空間へ!「焼きそば理論」って何??

いきなり、「焼きそばの作り方の話かよ」とお思いになった方もいらっしゃったかもしれませんが、そうではありません。私が店頭に立っていた頃、一緒に働くスタッフに自分がお店で表現したいことを伝えるために使っていた考え方が、この「焼きそば理論」です。端的に言えば、この理論はお客様に精神的高揚感を演出することで購買に結び付けるという考え方です。それでは順を追って簡単にご説明したいと思います。

 

お祭りという非日常空間

皆さんも同じような経験があるかと思いますが、地域の神社などで行われる夏祭りに子供の頃よく行かれたのではないでしょうか。お囃子の音楽、暗闇に輝く裸電球、迷路のような細い路地、焼きそばのソースや紅ショウガの香り。昼間に学校で会っていたにも関わらず、お祭りですれ違うものなら、1年ぶりに会ったかのようなテンションで挨拶を交わしたものです。大人は酒を飲み、踊り、子どもはわずかなお金を握りしめ買い物にいそしむ、まさに老若男女すべての人が、いつもとは違う不思議なテンションにつつまれた非日常空間、それがお祭りというものでした。

 

屋台の焼きそばは10倍の値段でも売れている

お祭りには多くの屋台が出店します。何件、焼きそばやお好み焼き屋があるのかというくらい同じ店が連打されますが、別に違和感をそれほど覚えません。そして、価格を見ると、焼きそば600円!家で作れば100円以下で作れますので非常に高いですが、屋台の焼きそばは飛ぶように売れていくわけです。

 

それはなぜか?来ている人たちは、焼きそばの品質、価格に興味を注いでいないからです。違う価値を求めています。お祭りという「非日常空間で買い物をするという行為」じたいに価値を見出しているのです。つまり、モノが欲しいのではなく、買い物をみんなで楽しみたい!と考えていて、商品は媒介にすぎず、楽しい体験、時間にお金を払っていると言えます。

 

旅のお土産、映画館のポップコーン

同じく、旅行先のお土産屋さんは非常によく売れています。旅行客は、普段は買わないようなおまんじゅうに1000円以上のお金を躊躇なく出します。清水寺に来た修学旅行生たちは、「絶対に必要ないだろ、それ」と思われる木刀をみんな買っていきます。これは旅という非日常的な時間、空間が作用していると言えます。この貴重な時間を「もっとみんなで楽しみたい!」という欲求が購買行動を起こしていると言えます。映画館やテーマパークで買うポップコーンも同じだと思います。みんなで買う、食べる、写真を撮る、こういった行動は、みんなで楽しさをシェアするために起こしているのです。

 

店舗はお祭りのような空間へ

いま、大量生産、大量消費の時代は終わり、世の中はコト消費の時代だと謳われ、充実した時間を過ごしたいというニーズが高まっていると言われています。この時代に店舗という場はどうあるべきなのか。それは、「店舗のお祭り化」すなわち店舗がお客様に「モノを買うという行為」じたいに楽しさを提供することが重要な時代になっていると言えるのではないでしょうか。良い商品を提案することを大前提として、「ここで買いたい!!」と思ってもらうにはどうしたら良いか、いまいちど考えてみてはいかがでしょうか。